CENTURY WEB MAGAZINE

センチュリーウェブマガジン vol.8

注目の公演

首席客演指揮者
アラン・ブリバエフが魅せる最高のステージ!
第223回定期演奏会

 「ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番は深い苦しみの中から生み出された作品です。ラフマニノフは1897年に交響曲第1番を初演するのですが、この作品が猛烈な酷評を受けたために鬱状態となり、3年ものあいだ、作曲ができない状態が続きました。彼はモスクワで、当時フロイト学派の精神分析学者であったニコライ・ダーリ博士の治療を受け、ようやく心身を回復します。ピアノ協奏曲第2番は、こうした経緯の中で作曲され、ラフマニノフの代表作と見なされるほどの大成功を収めたのです。この作品はダーリ博士に献呈されました」

さあ本番ステージへ!第212回定期演奏会(2016年10月)さあ本番ステージへ!
第212回定期演奏会(2016年10月)

 2017年11月、首席客演指揮者アラン・ブリバエフはセンチュリー・オーケストラハウスで、そんなエピソードを語ってくれました。3月、ピアノに小山実稚恵さんを迎える第223回定期演奏会。3年に渡った、彼のロシア音楽シリーズがいよいよ最高潮を迎えます。
 「ピアノ・コンチェルト2番の素晴らしさは、ピアノはもちろん、オーケストラパートの完成度にもあります。そのロマンティックな美しさにおいて、ラフマニノフはまさにチャイコフスキーと同じスクール(流派)の作曲家といえるでしょう。第3楽章にはチャイコフスキーの幻想序曲『ロメオとジュリエット』からの影響をうかがうこともできます。日本の優れたピアニストである小山さんとこの作品を一緒に演奏できることは、私にとって素晴らしい体験となるに違いありません」

センチュリーとの初共演ステージ第138回定期演奏会(2009年2月)センチュリーとの初共演ステージ 第138回定期演奏会(2009年2月)

 日本センチュリー交響楽団とカザフスタン出身のマエストロ、アラン・ブリバエフの初共演は2009年2月。その後3回の共演を経て、2014年から首席客演指揮者に就任しています。この頃のブリバエフの印象をヴァイオリンの下谷智子はこんな風に語っています。
 「彼が初めて客演指揮者で来た時、『若いのに落ち着いてるな』(当時まだ29歳で、定期演奏会客演では最年少でした。)と思いました。その頃の定期(第158回/2011年)で演奏したフランスもの(ドビュッシー『海』ほか)が印象に残っています。どこかとりとめのないとも思えるようなフランス風の漂い方がとてもしっくりきて、うまいなあと感じたことを覚えています」
 2014年7月、就任披露演奏会となった第193回定期演奏会ではラヴェルの『マ・メール・ロワ』ほかを演奏。独特の色彩感で会場を魅了しました。そしていよいよ2015年から、ロシア音楽シリーズが始まります。

第204回定期演奏会(2015年10月)第204回定期演奏会(2015年10月)

 「組曲『展覧会の絵』(第201回/2015年)の時、その絵の背景を事細かく伝えてくれたので画面が目に浮かぶようでした。僕が今まで持っていたイメージとは違うものだったのですが、新しいテンポ感、新しい印象を受け取ることができました。自分の音楽にオーケストラを近づけていく力が凄い人です」
 そう語るのは打楽器の廣川祐史。正統的な中にも、独特のオリジナリティを秘めたブリバエフの音楽は楽団員にも広く支持されていきます。オーボエの宮本克江も次のように語っています。
 「毎回のコンサートに、テーマをしっかり決めて臨まれる方です。構成ががっしりしていて骨太、だけど躍動感があって必ずどこか柔らかいのです。ラフマニノフ(第210回/2016年)は、はじめは私が思っていた感じと違いました。でも彼のテンションの高さに引っ張られ、これまでできなかった表現ができたと思います。最後は、必死でついて行きました。きっと彼の指揮は、聴いているお客様も夢中にさせていたのではないでしょうか」
 ムソルグスキーやラフマニノフ、プロコフィエフやショスタコ-ヴィチらの大曲に加えて、前半の選曲にもブリバエフならではの姿勢が見られました。日本初演となった、ジュバノフ、ハミディの歌劇『アバイ』より民族舞曲(第210回/2016年)もそのひとつ。どこか東洋的な響きが強く印象に残る作品でした。

カザフスタンの首都アスタナカザフスタンの首都アスタナ

 「カザフスタンの作品を日本に紹介できて、とてもうれしく思います。『アバイ』はカザフスタンでもっとも有名なオペラで、作曲者のアフメット・ジュバノフは私の曽祖父なのです。私の家系は音楽家が多く、ジュバノフの娘で私の大叔母に当たるガジザ・ジュバノワも優れた作曲家でした。彼女には『広島』という題名のバレエ作品があり、私はその楽譜を広島交響楽団に進呈しました。世界のいろいろな場所で私は母国の音楽をもっと演奏したいと思っています」
 アラン・ブリバエフは、少し誇らしげにそんなことを語ってくれたことがあります。

カザフスタン、ベルーハ山と草原カザフスタン、ベルーハ山と草原

 第223回定期演奏会について、再びアラン・ブリバエフ自身の言葉を引用したいと思います。
 「後半には2曲演奏します。ショスタコーヴィチの交響曲第9番は、ショスタコーヴィチが、独特のシニカル(皮肉)な表情を覗かせた作品です。第2次世界大戦の勝利のすぐあとに発表されたにも関わらず、彼はベートーヴェン以来の巨大な『第九』の伝統を受け継ぐこともなく、比較的小規模で現代風な交響曲を書いて、当時ソビエトの指導者であったスターリンを当惑させました。この作品の魅力を一言で言うとすれば、それは謎(エニグマ)だと思います。ユーモラスな部分があるかと思えば過剰なほどシリアスでもあり、しかもなかなか正体が見えない。そんな複雑な味わいを、ぜひ日本のみなさんにお届けしたいと思います。そしてもう1曲がボロディンの交響詩『中央アジアの草原にて』。これはボロディンが1枚の絵に霊感を受けて、西洋と東洋の民族が出会う風景を描き出した作品です。世界の平和を象徴するような風景であり、今の時代だからこそ、たくさんの人に聴いていただきたい作品だと思います。異なる民族の主題が別々に奏でられ、やがて大きくひとつに重ねられていきます。この曲を演奏する時、私はよく私の母国のことを思い出します。人々の美しい交流が音楽によって描かれる様子を、ぜひ感じ取ってください」

第223回 定期演奏会

2018年 3月16日(金) 19:00開演 (18:00開場)
    3月17日(土) 14:00開演 (13:00開場)

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My Favorite Things 〜私のお気に入り〜

吉岡 奏絵吉岡 奏絵(クラリネット)「北ドイツの港街ハンブルク」

 北ドイツの港街ハンブルク。私の大好きな愛すべき街です!初回のウェブマガジンでチェリスト、イェンス=ペーター・マインツさんの故郷としても紹介されました。私は様々な巡り合わせから運良くこの街に3年弱暮らすことが出来ました。日本で師事した先生がドイツで勉強された方々でしたので、留学したいという気持ちが芽生えたときにまずドイツが浮かびました。

(正面)左がフランス式、右がドイツ式(C管クラリネットで撮影)(正面)
左がフランス式、右がドイツ式(C管クラリネットで撮影)
(後ろ姿)(後ろ姿)

 クラリネットでドイツ留学を考えると、楽器のシステムが2つに分かれていることが大きな壁になります。私も使用し、ほぼ世界中で演奏され機能的な運指で華やかな音色のベームシステム(フランス式)と、主にドイツ、オーストリアで演奏されている複雑な運指で、大きな音は出ないけれどまろやかで温かみのある音色のエーラーシステム(ドイツ式)です。ドイツ、オーストリアは自国の楽器をとても大切にしており、オーケストラの木管セクションの響きもドイツ式クラリネットだとこんなにも変わるのか!と思うほどまろやかです。そしてオーケストラのオーディション要項には【クラリネット奏者募集(ドイツ式)】と掲載されているので、私のようにフランス式を演奏していると門前払いになってしまうのです。それでもブラームスを筆頭にドイツの音楽が好きだったり、初めてヨーロッパ旅行をした時にドイツに直感的な魅力を感じたことがハンブルクへの道標になったのだと思います。

ハンブルク的休日の黄昏ハンブルク的休日の黄昏

 ハンブルクに住む人はこの街を本当に愛しており、誇りに思っています。街の中心にはシンボルともいえる大きなアルスター湖があり、溢れんばかりの緑に囲まれた散歩コース、湖越しに見る街の夜景は美しさの極みです。

アルスター湖散歩中にドイツ人に倣ってひと休みアルスター湖散歩中にドイツ人に倣ってひと休み
アルスター湖越しの夜景アルスター湖越しの夜景

 空の色はグレーだったっけ?と思うほど毎日曇り空…たまに太陽が顔を見せると極寒でもカフェのテラス席!でお茶を楽しんだり、光を浴びに老いも若きも外へ出てくる姿はとても微笑ましいです。ビールはもちろんですがアイスクリームも国民食のような存在で散歩の必需品。一見クールだけど地図を持って困っていると優しく声をかけてくれるのもティピカルハンブルク人。そしてコンサートでは、同地出身ブラームスの作品を取り上げる機会がとても多く、ホールは"我が街の愛すべき作曲家"という温かい雰囲気でつつまれます。

木管五重奏で動物に囲まれての本番!木管五重奏で動物に囲まれての本番!
春にしか食べられない究極のドイツ料理、白アスパラ!絶品です。春にしか食べられない究極のドイツ料理、白アスパラ!絶品です。

 こんな街で出会った人たちに恵まれ、自分がクラリネットを通して西洋音楽を演奏する核のようなものを得ることができました。
 「愛すべき街はずっと憧れのまま」という思いで、日本に帰ってきた(こられた)ことも自分にとって良い選択でした。日本では“ドイツ=南ドイツ・ベルリン”のような印象ですが、ハンブルクは本当に人々が心豊かに過ごせる素敵な街です。(最新の世界住みたい街ランキングでもトップ10入り!)
 「またハンブルクに会いに行けるように!」という強い気持ちが私の日々の音楽活動の原動力になっています。

 最後にお知らせを一つ、4月26日(木)にセンチュリーリサイタルシリーズVol.5に出演することになりました。昨年10月、人生最後のコンクール!と思って受けた日本木管コンクールで第3位をいただき、何かソロのコンサートをしたいなと思っていたタイミングでしたので、とても嬉しく楽しみです!晩年のブラームスが、素晴らしいクラリネッティストに心惹かれ作曲したソナタをメインに演奏します。クラリネットの魅力を皆さまと共有できたら幸せです。

吉岡奏絵 クラリネットリサイタル

吉岡奏絵 クラリネットリサイタル

2018年4月26日(木)19:00
豊中市立文化芸術センター小ホール
全席指定 2,500円
club CaT・センチュリー定期会員 2,000円

club CaT・センチュリー定期会員
先行期間 2/23(金)~3/1(木)
一般発売日 3/2(金)


注目のトピックス

高橋宗久ヴァイオリンリサイタル

余すところなく、自分を表現したい

 好評をいただいている、豊中市立文化芸術センター小ホールの「センチュリーリサイタルシリーズ」。第4回に登場するのはヴァイオリン副首席の高橋宗久です。オーケストラでの演奏とは一味違った、センチュリー楽団員の表情が楽しめるこのシリーズですが、今回は高橋自身にとっても初のソロ・リサイタル。その熱気とアイディアはプログラムからもしっかりと伝わってきます。ステージへの抱負からプライベートの一端までを、高橋宗久に語ってもらいました。

高橋宗久(副首席第2ヴァイオリン奏者)高橋宗久(副首席第2ヴァイオリン奏者)

■ シリーズ第4回目にして、初めてのヴァイオリニスト登場でもあります。初めてのソロに臨む意気込みからうかがいたいと思います。

 「そもそも自分の音を聴いてもらうっていうのは自分の内側まで見せることだと思うんです。だからそれに共感してもらえたらいいなっていう気持ちですね。自分の感じていることとか、音楽の方向性を、みなさんにプレゼンする。こんなのありますよ、僕はこういう人ですよっていう演奏をするので、その世界に浸ってもらえたらいいなって思っています。これまでデュオや室内楽で弾いてきた経験はありますが、ソロ・リサイタルはそれともまた違う。だから余すところなく表現したいですね。自分のことを」

■ 1曲目のコレルリから現代音楽へ続く流れがすごいですね。時代が飛躍するというか。攻めてる感じがあります。

 「そうですね、チラシにも書いたのですが、どうしても邦人作曲家をいれたくて、糀場富美子さんの作品を取り上げました。邦人作曲家の作品はこれからも機会があるごとに取り上げていけたらいいなと思っています。この『ルブリョフの扉』というのはロシアの画家のアンドレイ・ルブリョフを題材にしていて、基本的に調性はないものの、静かなところと激しいところとがはっきりした作品です。リサイタル直前には糀場さんにお会いして、深く掘り下げてみたいと思っています。個人的にはこの流れを《B→C》(ビー・トゥー・シー:バッハからコンテンポラリーまでを意味する東京オペラシティのコンサートシリーズ)と呼んでいます。バロックからコンテンポラリー(笑)」

作曲家、糀場富美子さん作曲家、糀場富美子さん
イコン:アンドレイ・ルブリョフ(1360頃~1430)ロシアの修道士・聖像画家イコン:アンドレイ・ルブリョフ(1360頃~1430)ロシアの修道士・聖像画家

■ さらにサン=サーンスにレスピーギも。とても多彩な選曲だと思います。

 「そうですね、採り上げた作品は国も時代もいろいろなんですが、後半のエルガー『夜の歌&朝の歌』なんかもすごく素敵な曲なんですよ。5~6年前にこの曲を知って好きになって以来、事あるごとに弾いています。エルガーというと最近は『愛の挨拶』くらいしか弾かれないじゃないですか。だから、こういう作品もあるんだよっていう選曲です」

■ 高橋さん自身はオーケストラで弾くのと、ソロや室内楽で弾くのと、どちらが好き、というのはありますか?

 「僕はオーケストラに所属しているので、一応オーケストラと答えておきます(笑)。オーケストラで弾けるというのはいろんな意味で恵まれた環境ではあると思っていますので。だけどそこに甘んじずに何ができるかっていうことは、いつも考えていたいですね」

コンサート企画への溢れる思いを語るコンサート企画への溢れる思いを語る

■ では企画は常に考えている?

 「いろいろやりたいと思っています。このあいだはモーツァルトとボロディンに現代のミニマル・ミュージックのフィリップ・グラスを挟む、というのをカルテットでやりました。ちょっととんがったプログラムだったんですが、僕の狙い通りにいったというか、お客さまがミニマル・ミュージックに興味を持ってくださったみたいです。この演奏会はシリーズで考えていて、ひとりの作曲家でプログラムを固めるんじゃなくて、いろんな作曲家をサンドイッチ抱き合わせ商法みたいな選曲で採り上げていきたいと思っているんです。半年後くらいにまたやると思うので、ぜひ聴いていただけるとうれしいです。それから今考えているのは、日本人のヴァイオリンの製作者と、日本人のヴァイオリン演奏家による、日本酒のコンサートという企画。そもそも僕、日本酒がすごく好きなんですよ。それで、せっかく大阪に住んでるんだし、大阪にはヴァイオリンの製作者も結構いい人がいますし、お客さまも飲みながら聴く、というコンサートができないかな、と考えたんです。蔵元の杜氏さんを招いてお酒の説明をしてもらうというのも面白いかなって思っています。ヴァイオリン製作者の絡め方も今考えているところです。僕らが蔵に行ってクラシックコンサートをやるっていうのはよくあるんですけど、逆にお酒の関係者に来てもらっての演奏会はなかなかないので、お客さんにもお酒を振る舞って、販促みたいなものも兼ねてできたらいいねっていう話を今、進めているんですよ」

フィリップ・グラスを演奏したコンサートのチラシフィリップ・グラスを演奏したコンサートのチラシ

■ 日本酒がお好き、という話が出たので、コンサート以外のことも少しお聞きしたいと思います。演奏をしていない時はどのようにお過ごしですか?

 「お酒とご飯ありきですね。僕の人生は(笑)。お酒は飲みに行きますし、自宅でも飲みますし、ご飯は作ります。凝ってはいないですよ。設備もないですし。でも料理するのは嫌いじゃないですね。お酒に合う料理を作るのが好きなんです。最近は自分の中では和風カレーがヒットしました。出汁カレーっていうのかな、和風キーマカレーみたいな感じ。仕上げに山芋のすったのを入れてみたらそれがすごくよかったんですよ。これはハイボールもうまいけど日本酒もいけるな、みたいな。で、おつまみとしても、カレーとしてもいい感じにできあがりました」

OFFのお気に入りOFFのお気に入り

■ なかなか充実してますね。音楽は仕事を離れても聴く方ですか?

 「聴きますよ。最近はサーフ・ミュージックのジャック・ジョンソンとかよく聴きます。ジャズもジョン・コルトレーンなんかやっぱり好きですし。それから僕、出身が神奈川県の平塚なんですよ。地元ということもあってサザン・オールスターズと桑田佳祐は昔の曲から今の曲まで全部好き。ほんとうにいろいろごっちゃですね。あと、ちあきなおみとか好きです」

■ えっ、ぜんぜん世代というか、年齢が違うじゃないですか?

 「好きなんです。あの年代の邦楽はいいですね。日本語が本当にきれいで、うっとりする感じ」

■ 先ほどリサイタルでは「余すことなく自分を表現したい」と言ってましたけど、そういうクラシック以外の素養というか、片鱗みたいなものはステージでも意外なところで出てきそうですね。

 「出ると思います!本当に何にもとらわれずにやってみようと思ったリサイタルなので。例えて言うなら、今回は日本酒にただのお刺身だけじゃなくて、納豆も合わせる、ステーキもいくぜ、ピザもいっちゃうぜ、みたいなスタンスですから。そしてステージでお話ししている時に「お酒」っていう単語が何回出るかはわからないですが、絶対出て来るのは間違いないと思います。まとまりなく話してしまいましたけど気合は充分に入っていますので、たくさんのお客さまにお越しいただけるとうれしいです(笑)」

高橋宗久 ヴァイオリンリサイタル

高橋宗久 ヴァイオリンリサイタル

2018年2月21日(水)19:00開演(18:30開場)


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