懐かしい思い出を胸に…
第235回定期演奏会で共演するヴァイオリニスト、
竹澤恭子さんInterview

いよいよスタートした日本センチュリー交響楽団の30周年シーズン。首席指揮者・飯森範親を迎えた第234回定期演奏会のワーグナー、そしてブルックナーでいきなりクライマックス!の盛り上がりを感じていただけたことと思います。さて、次回第235回には、センチュリーにとって大切なふたりのゲストを迎えます。常任指揮者として6年間を共に過ごした高関健さんと、1994年に初の海外公演となったアメリカ演奏旅行で共演したヴァイオリニストの竹澤恭子さんです。竹澤さんと演奏するバーバーのヴァイオリン協奏曲は、そのアメリカ公演でご一緒した思い出の作品。竹澤さんに当時の思い出や、ひさびさのセンチュリーとの共演に寄せる抱負をうかがいました。

— 竹澤さんとセンチュリーの初共演は2001年6月8日の第70回定期演奏会。バルトークのコンチェルト第2番で指揮が高関さんでした。今回は3者のほぼ18年ぶりの共演になります。当時の思い出などを教えてください。

バルトークのヴァイオリン・コンチェルト第2番は当時の私にとって、運命を変えてくれた曲と言っても過言ではないと思います。さまざまな国々、そしてオーケストラでのデビューにこの曲を演奏いたしました。宇宙を感じさせるようなスケールに加えオーケストレーションも多種多様な楽器が使用され、民族的ないろいろなキャラクターの登場するバラエティ豊かな作品で弾きがいはあるのですが、それと同時にオーケストラとの限られたリハーサルの中でひとつにまとめるのも非常にチャレンジングな作品です。指揮者といかに密なコミュニケーションが取れているかということが大切になって来るわけですが、高関さんは桐朋の大先輩でもあり、この作品を熟知されていることもわかっておりましたので絶大な信頼とともに非常に安心して、楽しんで演奏した事を憶えています。

2001年6月8日 第70回定期演奏会

— 竹澤さんとセンチュリーといえば、やはり1994年、5周年の時のアメリカ演奏旅行です。今回演奏されるバーバーのコンチェルトもその時のプログラムですね。演奏旅行の思い出などをうかがえますか?

アメリカでのツアーをご一緒させていただいたことはとても懐かしいです。このツアーは10月だったのですが、ツアー中に私の誕生日があって、ゲネプロのときにバースデーソングをサプライズでセンチュリーの皆さまに演奏していただきました。かわいい犬のぬいぐるみをいただいて、とっても感激したことを今でも鮮明に憶えています。

1994年のアメリカツアー。サンフランシスコを起点に4つの州を巡る全8公演、約2週間の日程だった。指揮ウリエル・セガル、ヴァイオリンに竹澤恭子、ピアノにピーター・フランクルを迎え、ショスタコーヴィチ、ドヴォルザーク、バーバー、メンデルスゾーンほかの曲目が披露された。ボストン・グローブ紙(マサチューセッツ)に「印象的なほどに高度な演奏水準」と評される。写真は当時のパンフレット。

— バーバーのヴァイオリン・コンチェルトはロマンティックにも聴こえるし、とても現代的に聴こえたりもする曲だと思います。この作品の魅力、聴きどころなどについて少し解説をいただけますか?

この作品は、実はアメリカに留学してから出会った作品でした。当時、日本ではバーバーの作品は頻繁には演奏されていませんでしたし、このヴァイオリン・コンチェルトもあまり知られていなかったように思います。アメリカの音楽祭で初めて生で演奏を聴く機会があって、伸びやかで清々しい第1楽章、心に染み入る第2楽章、そして1、2楽章とは全くキャラクターの異なるスリリングな第3楽章と、それぞれが非常に印象的ですぐにでも弾いてみたいと思った作品でした。この曲の魅力は、出だしから聴衆の耳を捉え離さない、まるでアメリカの大草原を気持ちよく飛び廻っている様な魅力的なテーマと、その後に現れる対照的なリズミカルなセクション、そして嵐を思わせる様な激しいセクションがコンパクトに描かれている第1楽章にすでに表れています。第2楽章は曲の冒頭から静かな前奏に乗ってオーボエのソロが登場し、存分にオーボエの音の魅力と美しいメロディが融合します。それはアメリカの雄大な高地にそびえる美しい山々に響き渡るようで、この楽章の一番美しい部分をオーボエが担っていると思います。第3楽章は、打って変わってティンパニの前奏に導かれ、曲の最初から最後まで止まる事無く続く、聴く方も弾く方もスリリングな無窮動。演奏者の集中力がものすごく問われる曲です。

サミュエル・バーバー(1910-1981)

— ありがとうございます。ではザ・シンフォニーホールへ演奏会を聴きに来られるお客さまに、メッセージをお願いします。

ザ・シンフォニーホールでは今まで幾度となく演奏させていただいておりますが、ホール全体にとても自然に音が響き渡り、ステージ上でも自分の耳に心地よくクリアに聴こえ、その響きを体感しながら演奏できる素晴らしいホールだと思います。実は日本センチュリー交響楽団と同じく、今シーズンは私にとりましても節目の時、デビュー30周年に当たります。数々の懐かしい思い出を胸に、ひさびさに共演させていただく高関さん、そしてセンチュリーの皆さまとのステージをお届けできることを、心より楽しみにしております。

第235回定期演奏会

2019年5月16日(木)

19:00開演(18:00開場)

大学生時代からよく旅をしています。
旅行好きのきっかけとなった旅の出発地点は、鹿児島県でした。南鹿児島をめぐる観光バスに乗り、長崎鼻から指宿温泉に一泊して佐多岬へ。観光バスには、私と見ず知らずの乗客の2人だけでした。
それ以降は、夏休みを利用して一年ごとに岩手、函館を訪れ、最後は友達と三人で北海道をほぼ一周しました。

しばらくは専ら国内旅行をしていた私ですが、遂に海外一人旅のチャンスが巡ってきました。大学時代の親友がイタリアのヴェネツィアに留学したのです。ミラノ空港へ迎えに来てもらい、彼女の友達であるイタリア人の実家に泊まらせていただきました。その家族は明るくておしゃべりが大好き!夜はイタリア語の耳鳴りがしてなかなか寝られなかったことを覚えています。
親友とはミラノ、ベローナ、ヴェネツィアを一緒に旅して、そこから先は一人で電車に乗り、ローマの友人宅へ向かいました。イタリアでお世話になった方は皆フレンドリーで、ホスト精神にあふれていました。

『最後の晩餐』があるサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会
ミラノの象徴、ドゥオーモ(ミラノ大聖堂)

私の海外一人旅は、スマホによって画期的に進歩し、行動範囲が広がりました。
私のスマホデビューは一年ほど前で、それまでは頑なにガラケーを使っていました(先日タクシーに同乗させていただいたヴァイオリニストの千住真理子さんは、今もガラケーでした!)。今となってはスマホアプリの一つ、Googleマップが欠かせません。
去年、イタリアにいる親友とスコットランドのエジンバラで集合した時にもGoogleマップが大活躍でした。エジンバラは初めて訪れる場所でしたが、Googleマップのストリートビューで事前にシミュレーションをしていたおかげでいくらか気持ちが楽でした。

また旅の目的の一つとして、演奏会に行ったり、作曲家ゆかりの地を巡ることも増えました。
エジンバラでは、ホリールードハウス宮殿(イギリス王室の夏の御用邸)の横にあるホリールード寺院廃墟が一番印象的でした。そこはかつてメンデルスゾーンも訪れた場所だそうです。栄枯盛衰の歴史を象徴するさまを目の当たりにした彼は、強いインスピレーションを受け、すぐに16小節分の楽想を書き留めました。これが交響曲第3番「スコットランド」の序奏部分として反映されているのです。・・・という説明がオーディオガイドから音楽と共に流れると、空の色も重い空気もシンクロして熱いものがこみ上げてきました。やはりメンデルスゾーンは天才です!

ホリールード寺院廃墟

ロンドンではベルリン・フィルのBBCプロムス(※)を聴きに行きました。キリル・ぺトレンコ指揮、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏で、プログラムはデュカスの『ラ・ぺリ』、プロコフィエフの『ピアノ協奏曲第3番』、フランツ・シュミットの『交響曲第4番』でした。ぺトレンコさんは人柄も演奏も、とても理知的な印象を受けました。

演奏会はというと、交響曲のトランペットソロが圧巻でした!私があのような長大なソロをやれと言われたら、きっと倒れてしまうと思います…。そして、私の一番の目当てだったピアノ協奏曲は、ピアニストのユジャ・ワンさんが圧倒的なテクニック(水着のような衣装とハイヒールも…)で会場を魅了し、彼女のパリパリッとした音色は、まるでおもちゃ箱をひっくり返したようなきらびやかさでした。

※イギリス・ロンドンで毎年夏に開催される、8週間に及ぶクラシック音楽コンサート・シリーズ

BBCプロムスの会場

高校時代は音楽を職業にするなど思ってもいなかったスロースターターの私は、大学卒業後の海外留学が実力不足で叶わなかったため、本場での日常生活によってもたらされる様々な経験が出来なかったという悔しさがあります。しかし、旅をすることによって少しでも音楽の神髄に近づき、オーケストラの中でも私らしく弾きたいという思いを叶えられるのではないかと思っています。

センチュリーが豊中名曲シリーズの会場としている豊中市立文化芸術センターは、大阪の中心地、梅田から阪急電車で15分ほどの阪急曽根駅のすぐ近くにあります。駅前は庶民的な商店街の表情と、閑静な住宅街の入り口としての顔を併せ持った親しみ易い雰囲気。駅の東側に降りて徒歩5分ほどで豊中市立文化芸術センターに到着します。すでに地元周辺のお客さまを中心に定着した感もあるこのシリーズですが、今回はいよいよVol.10。ぜひ、より多くの地域から、たくさんのお客さまをお迎えしたいと思っています。

豊中市立文化芸術センター

その豊中名曲シリーズVol.10に迎えるのが、現代ハンガリーを代表する指揮者、ヤーノシュ・コヴァーチュ。1951年生まれ、ハンガリー国立歌劇場の指揮者を40年にわたって務めて来たベテランです。センチュリーとの初共演となった2017年7月の第218回定期演奏会では、母国の作曲家リスト、コダーイを中心としたプログラムで会場を圧倒し、またそのリハーサルを通じて見せた誠実な人柄は、多くの楽団員を魅了しました。今回は採り上げる3曲がいずれも短調という珍しいプログラム。ブラームスが明るい『大学祝典序曲』と対を成すように書き上げた重厚な『悲劇的序曲』、そしてそのブラームスが(ベートーヴェン同様)敬愛して止まなかったシューベルトの交響曲第7番『未完成』と、前半だけでも聴き応え十分のドラマティックな作品が並びます。休憩時間には『未完成』第2楽章最後のほのかに輝くような音の余韻を、ごゆっくりとお楽しみください。

2017年7月 第218回定期演奏会

さて、シューベルトの『未完成』がなぜ“未完成”となったのか、といういきさつは音楽史上のひとつのミステリーですが、後半に演奏されるチャイコフスキーの交響曲第6番『悲愴』もまた、繰り返し謎めいたイメージで語られる作品です。それはこの作品が持つ独特の陰影とチャイコフスキー自身がこの作品の初演後、わずか9日で死亡してしまったという事実に由来します。自殺説まで流れた突然の死(現在ではコレラに因るものと言われています)が音楽と関連付けられてしまったのですが、チャイコフスキー自身は作曲中から、この作品を自分の最高傑作だと語っています。もし、この『悲愴』を今回初めて聴く、というお客さまがいらしたら、まずは作品の背景に深く立ち入ることなく音楽そのものの魅力を感じていただくことをおすすめします。チャイコフスキーにしか書けなかったであろう美しい旋律と響きに溢れていて、なぜこの作品が多くの人の心をつかむのかがよくわかると思います。

ヨハネス・ブラームス
(1833-1897)
フランツ・シューベルト
(1797-1828)
ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(1840-1893)

交響曲第6番『悲愴』はセンチュリーの大切なレパートリーのひとつ。これまで多くの指揮者とともに、さまざまな『悲愴』を演奏して来ましたが、ヤーノシュ・コヴァーチュがどのような音楽を生み出すのか、今回の豊中名曲シリーズは私たちオーケストラ一同にとっても期待の共演です。またコヴァーチュはこのあと、6月13日(木)にザ・シンフォニーホールで行われる第236回定期演奏会にも登場。リストとバルトークという母国の作曲家の作品を披露します。現代を代表する指揮者と、さまざまなプログラムで共演できることは私たちにとって大きな喜び。この喜びをたくさんのお客さまと分かち合いたい、そんな風に考えているところです。

センチュリー豊中名曲シリーズVol.10

2019年6月8日(土)

15:00開演(14:15開場)

第236回定期演奏会

2019年6月13日(木)

19:00開演(18:00開場)

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