CENTURY WEB MAGAZINE

センチュリーウェブマガジン vol.1

注目の公演

いずみ定期演奏会No.35 ハイドンマラソン

3シーズン目を迎えたセンチュリーのハイドン。
首席ホルン奏者、水無瀬一成とのモーツァルトをまじえて

ハイドン
飯森 範親

 5月26日(金)に行われるいずみ定期演奏会No.35でハイドンマラソンはいよいよ3シーズン目を迎えます。今回センチュリーが取り上げるのは、ふたつのドーニ交響曲とイギリス交響曲です。全部で104曲以上あるハイドンの交響曲には「イギリス交響曲」「パリ交響曲」「ドーニ交響曲」など、独特の名称を持つ一連の作品がありますが、このことは当時の彼の人気と無縁ではありません。これらの名称はハイドンへの作曲依頼の事情と結びついているからです。エステルハージ家の宮廷楽長として30年以上にわたって安定した作曲活動を行なったハイドンは、後年イギリスで大成功を収めますが、すでにそれ以前においてもウィーン、パリなどヨーロッパの主要都市に知られた大人気作曲家だったのです。

 1779年、ハイドンは雇い主であるエステルハージ家の当主、ニコラウス・ヨーセフから契約条件の一部を緩和されます。彼の音楽に対するエステルハージ家の独占権が解かれたのです。これによりハイドンは、エステルハージ家以外からの依頼を受けることができるようになりました。こうした中、ハイドンをイギリスへ招こうとする動きがあり(実現はしませんでした)、そのために準備されたのが、3曲の「イギリス交響曲」(第76番〜第78番)です。1785〜86年にはパリの演奏団体、コンセール・ド・ラ・ロージュ・オランピック(※1)のために6曲の「パリ交響曲」(第82番〜第87番)が作曲され、この時契約を結んだドーニ伯爵の求めに応じ、さらに3曲の「ドーニ交響曲」(第90番〜92番)が書かれます。この「パリ」と「ドーニ」の間にヴァイオリン奏者ヨハン・トストに餞別として贈った2曲の「トスト交響曲」(第88番・第89番)があります。1791年、エステルハージ家を離れたハイドンは晴れてロンドンへ渡りますが、この地で彼にさらなる名声をもたらした交響曲がいわゆる「ザロモン交響曲」(第93番〜第98番、第99〜104番 ※2)であることはよく知られています。今回のメインプログラム、交響曲第92番「オックスフォード」は、その「ザロモン交響曲」に先駆けてイギリス、オックスフォード大学で、ハイドンの名誉音楽博士号授与式に際して演奏された作品です。ハイドン後期の円熟味あふれる響きをお楽しみください。

ハイドン演奏

 今回ソリストとして登場するのは、首席ホルン奏者の水無瀬一成。モーツァルトのホルン協奏曲第2番を演奏します。近年の研究によるとモーツァルトが残した4曲のホルン協奏曲のうちもっとも早い時期に書かれたもので、求められる技術も高い作品です。昨年はハイドンのトランペット協奏曲で、首席トランペット奏者の小曲俊之が鮮やかな独奏を披露しましたが、今年も名手が揃ったセンチュリーならではの演奏をお届けしたいと思います。「モーツァルトの時代の音楽家が持っていたようなアグレッシブさや楽しさを出せたら」と水無瀬。その妙技に期待、です。

水無瀬 一成
注(※1)コンセール・ド・ラ・ロージュ・オランピック:1783年に設立されたパリの演奏団体。当時のヨーロッパでもっとも優れたオーケストラのひとつとみなされており、マリー・アントワネット存命時のトゥイルリー宮などで演奏した。2015年よりヴァイオリニストのジュリアン・ショヴァンによって復活の試みが行われている。
注(※2)ザロモン交響曲:「ロンドン交響曲」とも。ハイドンやモーツァルトをイギリスに紹介したドイツ生まれのヴァイオリニスト、興行主であったヨハン・ペーター・ザロモンの名前に因む。

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いずみ定期演奏会No.35
ハイドンマラソン

2017年5月26日(金) 19:00開演 (18:00開場)

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My Favorite Things 〜私のお気に入り〜

巖埼友美巖埼友美(ヴァイオリン)「赤毛のアン」

本棚

 子供の頃の夢は、児童文学作家になることでした。小中学生の時は、よくノートに物語を書いては友達に読んでもらったりしていました。ある日教室で、テリーという名の主人公が出てくる話を書いていたら、それを見つけたクラスの男の子にテリーと呼ばれて…それがそのまま私のあだ名になりました(笑)。 今でも、当時の級友にはテリーと呼ばれています。

 その頃とても夢中になっていた本があり、その影響で、登場人物に英語風の名前を付けていました。その本とは、カナダの作家、L.M.モンゴメリの「赤毛のアン」シリーズです。アニメや映画にもなっている有名な物語ですが、出版されている本10巻すべてを読まれた方は、あまり多くないかもしれません。身寄りのない少女アンが、プリンスエドワード島の田舎の老兄妹の家に引き取られ、成長して教師と作家を目指し、当時はまだ少なかった「働く女性」として活躍します。幼なじみのギルバートといくつかのすれ違いを経て結婚し、第一次世界大戦のさなか6人の子どもを育て上げるまでを描いています。壮大な人生のストーリーですが、その中に丁寧に描かれる日々の小さな喜びや悲しみが、一つ一つ宝石のようです。カナダのプリンスエドワード島の風景描写の美しさにも心を奪われました。何しろ、海も大草原もない日本の埼玉県で育ったので。

小学生だった私小学3年生初めての発表会で

 当時小学生だった私は、全10巻を読み終わったものの、アンの世界に別れを告げるのが寂しくて、また最初から全部読みなおし、結局5回ほど通して読んでしまいました。そんなわけで、私が当時書いていた物語の登場人物は、皆、英語名なのでした(笑)。

 アンから沢山のことを学びました。想像力を働かせて楽しむこと、自分とは違う他者とのコミュニケーションを諦めないこと、身の周りに美しいものを見つけていくこと。失敗にめげず、ユーモアで笑い飛ばして、糧としてしまうこと。私は、音楽の道を歩むようになりましたが、演奏するということも、物語を語ることと、ある部分とても似ていると思います。まだ見たことのない世界をイメージしたり、自分とは全く違う人の心の中をのぞかせてもらったり。その面白さを聴く人にも伝えられるように、日々鍛錬したいなと思います。ちなみに今でも、「赤毛のアン」を自分で翻訳するという密かな夢を持っています。日本センチュリー交響楽団に入団してもうすぐ1年半。素晴らしい環境に幸せを感じていますが、まだまだ毎日が失敗と学びの連続です。うまくいかず凹(へこ)んだ日には…アンのこの言葉を思い起こします。「明日という日が、まだなんの失敗もしていない新しい日だと思うと、うれしくなるわね。」


廣川祐史 廣川祐史(パーカッション)
「自作のパーカッションスコア」

スコアの写真
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 オーケストラで演奏する上で大事な物のひとつに「楽譜」があります。ほとんどの出版譜は問題ないのですが、時おり自分にとって非常に読みにくい楽譜があったりします。「オペラ」の楽譜なんかもそのひとつです。そういう時に自作の「パーカッションスコア」を作成しています。楽譜には練習番号というのがあり、楽譜の各所に数字やアルファベットが順番に振られているのですが、打楽器の楽譜には突然「練習番号15」のように途中経過が楽譜からすっぽり削除されている場合がよくあるのです。こうなると打楽器の楽譜だけではお手上げです。また困る例としては、複数のパート譜に同じ楽器が記されている時です。例えばパーカッション1・2・3と分かれた譜面の1と3に大太鼓が出てくるとふたつの楽譜を行ったり来たり…。こういった楽譜って演奏上非常にストレスになります。そこでこの「パーカッションスコア」を作っておけば、僕だけじゃなくて、エキストラで演奏に参加してくれる奏者の皆さんの助けにもなるかなと思って作り始めました。こういった打楽器特有のストレスが軽減されること以外にも、楽譜を書き直すことで、楽譜に書いてある音楽を自分の中に取り込めるという良さもあります。また練習の前に曲を勉強する際も、打楽器同士がどのように絡み合っているかが一目でわかります。

 今でこそ、こんなふうにマメなことをしていますが、小学校4年生の時金管バンドクラブで打楽器を始めた時はドレミも読めない状態でした。初めて担当したのは鍵盤楽器のグロッケンシュピール。楽譜と格闘しながら一生懸命練習したのを覚えています。「できなかったのができた」という達成感を味わいながら段々上達して、吹奏楽部に所属していた中学3年生の頃には音楽大学に進学することを考えていましたね。

 最近では、演出で楽器を演奏しながら舞台を練り歩いたりもしましたが、普段は演奏の核になる時と後ろから支える時のバランスを考えながら、オーケストラ全体を客観的に捉えて演奏しています。シンバルやトライアングル、大太鼓、小太鼓など、各楽器の特徴があって、すべての楽器をある一定の水準で演奏し、オーケストラになじむ音を鳴らすのは熟練の技術が必要ですね。でも、世界中には数えきれないくらい打楽器の種類があって、今まで見た事もないような楽器に出会い演奏できた時はとても楽しくて、打楽器奏者になって良かったなと思いますね。

第213回定期 “イスタンブール・シンフォニー”(F・サイ作曲) 演奏シーン第213 回定期 “イスタンブール・シンフォニー”(F・サイ作曲) 演奏シーン

注目のトピックス

第218回定期演奏会ソリスト
イェンス=ペーター・マインツ(チェロ) Interview

 第218回定期演奏会でシューマンのチェロ協奏曲を共演する、イェンス=ペーター・マインツさんをご紹介します。ドイツ、ハンブルク出身。1994年、17年間優勝者が出なかった難関、ミュンヘン国際コンクールのチェロ部門で優勝を果たし、以来ソリストとして世界的な活躍を続けています。また、2014年に亡くなった世界的指揮者クラウディオ・アバドの招聘を受け、2006年からは世界の一流奏者で編成されるルツェルン祝祭管弦楽団で首席チェロ奏者も務めています。「常に若々しい気持ちで、どんな作品に対しても新たな側面や生き生きとした部分を探求したい」と語るマインツさん。その人柄をのぞかせるインタビューをお届けします。

— シューマンのチェロ協奏曲は、渋い色合いの中にチェロ独奏とオーケストラの響きが融合した名協奏曲のひとつだと思います。マインツさんはこの作品をどのように捉えていますか。

私が興味深いと感じるのはシューマン自身やクララ・シューマンがこの曲について述べる時、チェロ協奏曲というよりもコンツェルト・シュトゥック(協奏的小品)として紹介していることです。3つの楽章がひとつに集約された曲、というような感じでしょうか。各楽章は密接に絡み合っていて、特に第1楽章と終楽章は非常に関連しています。そのため楽章間の移行とテンポが重要になってきます。各楽章に対してシューマンが持っていたテンポへの考え方は、当時も今も、聴く者に少し違和感を抱かせるものかも知れません。でも私が大阪で実現したいと思っているのは、シューマン自身がこだわって記したテンポにできる限り近づけて演奏することによって、作品全体をひとつにまとめ上げることなのです。もともとチェロとピアノのために発想されているので、この作品にとって“シンプルであること"は重要な要素です。そのシンプルさを通して、聴いている人の芸術的感覚にダイレクトに訴えることのできる演奏をしたいと思っています。

— ハンブルクのご出身ですね。日本では偉大な作曲家ブラームスの出身地として知られています。

そうです。ブラームスの生まれた街でもあります。今年、この街には新しいコンサートホール「エルプフィルハーモニー 」が完成しました(写真下)。ブラームスはハンブルクではあまり評価されて来ませんでしたが、私は新しいホールの完成がこうした見方を変えるように思っています。今後、このホールではたくさんのブラームスの作品が演奏されていくでしょう。それこそが彼の作品への正当な評価だと思います。また私は、音楽にはその土地の気候や風土が影響することがあると思います。私がまだオーケストラに在籍していた時に、サー・ロジャー・ノリントンとブラームスの交響曲を演奏したことがあります。ハンブルクは北海に近いのですが、この海は非常に荒々しい海なのです。ノリントンはリハーサルで言いました。「君たちはブラームスがこの荒れ狂う海を泳ぐようなイメージを持たなければいけない。大きな波のうねり、信じがたいほど荒れているが、美しい自然でもあるこの海で泳ぐことを」。実際にこの言葉が音楽から個性を導き出してくれました。北風と波しぶきがブラームスへの距離を縮めたと言えるかも知れません。

エルプフィルハーモニー

— 日本センチュリー交響楽団とは今回、初めて共演します。日本のお客さまに伝えたいことはありますか?

ソリストとして大阪で演奏するのは今回が初めてです。日本センチュリー交響楽団については素晴らしい評判を聞いているので、このオーケストラとともに、お客さまにシューマンのチェロ協奏曲の新たなキャラクターや雰囲気を見つけていただけるような演奏ができたら幸せです。日本はたびたび訪れていますが、日本のお客さまの音楽の知識や鑑賞力にはいつも驚かされますし、アーティストとして受ける最高のもてなしに感謝しています。実は私が日本を好きな理由には、私の趣味に関わる特別なわけがあるんです。私は飛行機のプラモデルを作るのが大好きなのです。日本のプラモデルのブランドはモデルキットやアクセサリー、塗装、道具、すべてにおいて世界で最高品質だと思います。だから日本に行くといつもエージェントの人たちに、街で一番良いプラモデルのお店はどこかと聞くんですよ。今回もそんな風に日本での滞在を楽しみたいと思っています。

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第218回 定期演奏会

2017年 7月7日(金) 19:00開演 (18:00開場)
    7月8日(土) 14:00開演 (13:00開場)

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■Photo Gallery〜素顔のイェンス=ペーター・マインツさん

父とのショット、2〜3歳の私です。お気に入りの写真。
父とのショット、2〜3歳の頃。

大好きなスキーを息子と一緒に。大好きなスキーを息子と一緒に。

時計を集めるのも好きです。時計を集めるのも好きです。

趣味は飛行機のプラモデルを作ること。お気に入りの趣味は飛行機のプラモデルを作ること。より精密に。最近テレビで、有名なピアニストのグレゴリー・ソコロフのドキュメンタリーを観ていたら彼も同じ趣味を持っていて、少し嬉しかった。

自転車も楽しんでいます。そして自転車も楽しんでいます。特にここベルリンのテンペルホーフ広場でよく乗ります。ここは市中心部にある元々空港だった場所です。

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