湖水のほとりに響く『田園』
巨匠マックス・ポンマーを迎えて
びわ湖定期公演Vol.11

 びわ湖の豊かな湖水が目の前に広がる絶好のロケーションの中で、センチュリーの響きをお楽しみいただくびわ湖定期公演。日本センチュリー交響楽団はそのVol.11に、3度目の共演となるマックス・ポンマーを迎えます。2015年、第199回定期演奏会では雄渾な響きのベートーヴェン、交響曲第3番『英雄』で客席のみならず楽団員からも熱い支持を集め、翌年9月の第211回定期演奏会では、柔らかな陽射しのこぼれるようなブラームスの交響曲第2番で会場全体を幸福な気持ちに包んだポンマー。1936年にバッハ、メンデルスゾーンゆかりのライプツィヒに生まれ、ヘルマン・アーベントロートやヘルベルト・フォン・カラヤンといった大指揮者に師事した彼は、ドイツ音楽の伝統を今に受け継ぐ巨匠のひとりなのです。オープニングはモーツァルトの歌劇『魔笛』序曲から。厳かに奏でられる序奏のあと、聴く者を一気にメルヘンの世界へ連れ去るような展開はモーツァルトならではの楽しさに溢れています。

 コンチェルトはメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲ホ短調をお届けします。メンデルスゾーンが1844年に書き上げた作品で、翌年、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団によって初演されました。独奏ヴァイオリンは、同楽団のコンサートマスターだったフェルディナンド・ダヴィッドが務め、演奏史にその名を残しています。今回ソリストに迎えるのは南紫音。2005年にロン・ティボー国際音楽コンクール第2位、2015年には難関で知られるハノーファー国際ヴァイオリン・コンクールで第2位を受賞するなど、今着実な成長を遂げているヴァイオリニストのひとりです。憂いと情熱を交錯させながら切れ目無く演奏される全3楽章。その魅力たっぷりの世界を堪能してください。

 ベートーヴェンの交響曲第6番『田園』は、センチュリーの大切なレパートリーのひとつ。そしてポンマーさんとの共演を楽団員も待ち遠しく思う作品でもあります。1808年12月22日、ベートーヴェンが交響曲第5番『運命』と同じ日に初演した作品で、作曲家の理念を厳しく凝縮したかのような第5番と対を成すように、ここでは自然の豊かな情景に触れた感情の動きが伸びやかに歌われていきます。第1楽章の「田舎に着いた時の愉快な気分」をはじめ、ベートーヴェンが各楽章に標題をつけた唯一の交響曲で、全5楽章(第3楽章以降は続けて演奏される)を聴き終えた時の充実感は格別。広大なびわ湖の風景の中で楽しむにふさわしい作品です。

2016年9月23日 第211回定期演奏会

 2018年も終わりに近づく1日。師走の慌しさから少し離れて音楽と一緒に過ごしてみてはいかがですか? マエストロと一緒にびわ湖ホールでお待ちしています。

びわ湖定期公演Vol.11

2018年12月16日(日)

15:00開演(14:15開場)

 フルートは真正面に持つのではなく、横に構えて(左右非対称な姿勢で)吹くので、どうしても体が歪んでしまいます。その上、オーケストラでは座って演奏するので長時間その歪んだ状態でいることになります。全てのフルート奏者が抱えるこの逃れられない悩みを少しでも解決するべく、大学生の頃からヨガやジムでのマシーントレーニングに通い、時には整体やマッサージにもお世話になっていました。

いずみ定期公演にて
Y字バランス(隠れキャラがいます)

 他に水泳も通いましたが、今はもっぱらジョギングです。

 「走る」と聞くと足を酷使するように思いますが、実は「腕の振り方」がとっても重要。走る事によって肩こりが緩和し、体の歪みも矯正されているように感じます。

 何事も形から入るタイプなので、まずはジョギング用シューズとウェア、光るセーフティバンドを購入し、近所の公園や川沿いを走るようになりました。
 最初は短い距離しか走れませんでしたが、慣れてきたら少しずつ距離が伸びていき、毎回自分で定めた小さな目標を達成することが楽しくなりました。
 午前中がゆっくり過ごせる日には、日焼け止めを塗り、帽子&サングラス&マスク&首にUVカットタオルと、完全防備で出発! すれ違っても誰も私とは気づかない事でしょう。
 ジョギング中はイヤホンなどは付けず、極力真っ新な心で出かけます。朝ランでは目に入ったもの、肌で感じる空気、街騒など新しい一日の始まりを楽しみ、夜ランではその日のリハーサルや本番の曲を反復している事が多くなります。記憶の中で音楽を再現するのは、楽器の技術的制約から解放されとても良い練習にもなります。ただただ数字を数え黙々と走っている日もありますが、走った後にはエンドルフィンとセロトニンに満たされ頭がスッキリしています。
 これから徐々に寒くなりますが、これからがジョギングシーズン。夏よりも気持ち良い汗をかくことが出来るので、冬の方が走りたくなります。

 と、いろいろ書きましたが、走る一番の理由は御飯をお腹いっぱい食べたいから!カロリー消費にはジョギングが一番と、某雑誌の特集記事で見つけて始めましたが、走り始めてから色々良いことが起こり、正に棚ぼた状態。止められなくなっています(止めると太る…)。

 愛知県三河湾のそばで生まれ育ちました。
 家の前の道路は海に向かっておだやかな坂。脇道に入ると急で湾曲した坂道が沢山あり、小学校も中学校も坂道を登った先にありました。特に中学校は小さな山の中腹にあったのですが、マラソン大会のスタート地点は更に山を登った所に…。スタートする時点ですでに息が上がっている状態で、大嫌いな行事でした。
 そんな私が自らの意志で走るようになるとは、三つ子の魂もわからないものです。

 大きな目標だと途中で諦めてしまいがちなので、小さな目標を設定・達成し成功体験を積み重ねることで少しずつ成長していけたらと長い目で自分を見つめています。

 日常の小さな幸せに心が反応出来るよう、心身とも柔軟に。

三河湾に浮かぶ竹島

 今回インタビューしたのは2019年1月25日のいずみ定期演奏会「ハイドンマラソン」で演奏される『ポーコン(ヴァイオリンとポータブル打楽器のための協奏曲)』を作曲した野村誠さん。2014年度から日本センチュリー交響楽団のコミュニティプログラムディレクターを務め、さまざまなワークショップやアウトリーチ活動で成果をあげています。「“ポーコン”て何でしょう」から始まったインタビューはやがてオーケストラの可能性を問いかける、自由で希望にあふれるメッセージへと発展していきます。野村さんとセンチュリーが取り組む新しいオーケストラの姿とは?

【音楽の面白さは、結びつかないもの同士が出会うこと。】

■では最初にお訊きします。“ポーコン”ってどんな音楽なんですか?

野村:『ポーコン』っていうのは、副題が『ポータブル・コンチェルト for ヴァイオリン&パーカッション』って言います。ポータブルの“ポー”と、コンチェルトの“コン”ですね。2011年に近藤浩平さんという作曲家と一緒に自主企画でコンサートをしようという話があって。と言っても大掛かりなことはできないから、タンバリンやカスタネットなんかとヴァイオリン1挺でできるコンサートを作れないだろうか、という話になったのが作曲のきっかけです。作曲自体は2013年だったと思います。

作曲家・近藤浩平氏

■ヴァイオリンと打楽器の“持ち運びできる”コンチェルトですね。

野村:ヴァイオリンと打楽器3人。当時近藤さんが、コンチェルトを書きたいけどオーケストラを雇うお金はないし、音楽室にあるような打楽器がオーケストラだったらヴァイオリン協奏曲が書けるのに、と言いながらヴァイオリンと打楽器ですでにポータブル・コンチェルトっていうのを書いていたんですよ。近藤さんのその作品があったから、僕も打楽器奏者3人とヴァイオリニストだけでできる作品を考えないかっていう話になったんです。ヴァイオリンには結構超絶技巧的なことも要求したりしてるんですが、打楽器はトライアングル、ウッドブロック、カスタネット、タンバリン、ギロ、それにサスペンデッドシンバル、この6種類しか出てこない。小学校の音楽室にある楽器しか使っていないんです。

「ポーコン」でソリストを務める松浦奈々

■ではちょっと難しいお願いをします。せっかくハイドンマラソンの中で演奏されるので、この「ポーコン」の聴きどころを強引にハイドンとつなげて語って下さい(笑)。

野村:「ハイドンとつなげて」ですか(笑)。ユーモアかな。ハイドンと通じるところといえば遊びとかユーモアかも知れない。ハイドンはベートーヴェンみたいに「形式を解体していく」っていうよりは、形式の中にいるからこそいろんな遊びができた作曲家だと思うんです。だからこの「ポーコン」というのも、コンチェルトっていうものを前提としたうえでそこからずらすというか、それを遊ぶというか、「コンチェルトっていうものがありますよね」とか、「ヴァイオリンとオーケストラでやりますよね」といった共通認識の上で遊んでいるっていうことが言えるかも知れない。そこがハイドンと共通するかも知れません。

フランツ・ヨーゼフ・ハイドン(1732-1809)

■野村さん自身の中ではその“ユーモア”みたいなものはどのように捉えられているものですか? というのは、第1回「世界のしょうない音楽祭」の時に日本センチュリー交響楽団のテーマをグレゴリオ聖歌で歌ってみたりしたでしょう? あれは言ってみれば“庄内の町おこし”なのだけれど、そこにとんでもないものを音楽の中心から持ってくるような発想の意外さにびっくりした覚えがあるんです。

野村:音楽ってできるだけ結びつかないもの同士が出会う方が面白いと思うんです。だから作曲の魅力というのはポリフォニーの音楽だったら違うメロディがどう出会うか、とか、ポリリズムなら違うリズムがどう出会うかということ。僕は作曲の面白みは“違うものの出会わせ方”だと思っているんです。そういう意味では出会いがある種ありきたりな出会いだと、あえて新しい時代にやらなくてもいいんじゃないかと思う部分があるので、できるだけ音楽や作曲の中で「あ、こんな出会いもあるんだ」っていうことが演出できたらいいのかなと思うんです。

■このハイドンと『ポーコン』も新しい出会いですよね。

野村:いずみホールの定期演奏会でハイドンと『ポーコン』が並んでいるっていうのはすごく意味があると思うんです。まわりが全部現代作品でその中に『ポーコン』があるっていうよりもすごく僕としてはうれしいです。まずいずみ定期にくるお客さんに聴いていただけるということは、現代音楽が並んでいるコンサートだから来るっていうお客さんよりも“聴くつもりがない人が聴く”っていうことになるじゃないですか。そこがある種うれしいわけです。で、出会ったことで人によってはそれが好きとか好きじゃないとかいろんなことはあると思うんですけど、でもやっぱりそういうある種の『驚愕』があったほうがいい。これがずーっとハイドンだったら、聴く人には『驚愕』がないですから。

■鮮やかですね。『ポーコン』とハイドンの交響曲第94番『驚愕』の出会い(笑)。

第14回ハイドン大学
http://www.century-orchestra.jp/topics/haydon_dai14/

【最初は手探りだった就労支援プログラム「The Work」】

■それではコミュニティプログラムについてのお話をうかがいたいと思います。野村さんってセンチュリーで何をやっているの?っていう質問から進めたいと思うんですが、ある意味これが今日の質問の中心になるかも知れないです。前回、事務局でコミュニティプログラムを担当している柿塚拓真さんが、「センチュリーのコミュニティプログラムの根幹を考える時に、まず野村さんをセンチュリーで働いてもらうために口説くのが最初の僕の仕事だった」って語っていたんですね。最初に依頼されたのはどんな仕事だったんですか?

野村:最初の依頼は、「オーケストラと何がしたいですか?何をしたいですか?」です。「野村さんがやりたいと思うことを実現させるのが僕の仕事ですから、アイデアを出してもらえますか?」と、柿塚さんに言われたのが最初でした。

■その段階ではまだ漠然としていたんですね。アイデアはあったんですか?

野村:いいえ。それに対して僕は「僕がやりたいことをオーケストラができる体制であればいくらでも言うけれども、何ができるのかもわからないまま『それは無茶だ』ってみんなが拒絶してしまったら何も実現しないので、とりあえず今はみんなができそうなことをやってみよう」って言ったんです。それから柿塚さんが「ハローライフ」※の人たちを見つけてきて、この若者との就労支援のプロジェクトをやりたいっていう提案があった。だからスタートは「The Work」ですね。

※若者の就労支援活動を行っているNPO法人
music project「The Work」2017
https://hellolife.jp/the-work2017

■僕は「The Work」の現場で初めて野村さんにお目にかかって後半3回くらい取材させてもらったんですけど、あれがどう収まっていくんだろう…というところにすごく興味を感じました。本当にこれで曲ができるのだろうかとか、そしてその曲っていうものが参加している人たちを充実させることにつながるんだろうかとかを素人目に考えていました。最終的にその両方を見て“これはすごいな”という感想が沸いたんです。

野村:「The Work」の1回目、1年目が一番大変でしたね。

「The Work」の様子

■柿塚さんも「そこだけみたら、ただの気まずい場所でしかなかった」という風に話していました。楽団の人たちとも初めてだったんですよね。

野村:柿塚さん以外、僕が誰からも信頼を得ていない状態で始まっていて、楽団の人たちもそのためのトレーニングや準備がない状態で、いきなりワークショップの中に放り込まれているから不安がいっぱいだったと思います。僕はそうした彼らのプライドを傷つけるようなことをしてもいけないし、何より参加してくれた若者たちを大切にしないといけない。その上でこの人たちにいろいろと挑戦してもらわないとプロジェクトは進んでいかないので、みんなが「不安なので…」って引いているだけでは始まらない。その場にいる全員がうまくチャレンジしてくれるように場を創っていくということが必要だったわけです。それが大変な作業だったな、と思いますね。

コミュニティプログラムには楽団員が積極的に参加

The Workについて、こちらの記事もご覧ください。
http://www.century-orchestra.jp/webmagazine/vol11.html#topics

「The Work」で生まれた作品、
野村 誠:チェロ協奏曲
「ミワモキホアプポグンカマネ」楽譜公開中です。
http://www.century-orchestra.jp/topics/nomura/

■ものすごくアウェーな感覚だったと思うんですが、今はセンチュリーに対してそういう感覚は?

野村:無いです。最初僕はよそ者感を持って接していたわけですけど、今では「自分はこのオーケストラの一員だ」っていう風に思えるようになりました。もちろん、それはセンチュリーの中でいろいろと仕事をするうちに思えてきたことなんですが、去年イギリスのボーンマス交響楽団のコーンウォールでの1週間のプログラムにゲストコンポーザーとして参加したことが大きいですね。

■イギリスでの体験が、センチュリーとどう結びついたのでしょう?

野村:ボーンマス交響楽団の事務局の人と一緒にイギリスのいろんな小学校を訪ねて、子どもたちと音楽を創る活動を行ったんです。ボーンマス交響楽団が担当するエリアってすごく広くて、その中でもイギリスの一番西の果てのコーンウォールっていうエリアでは1週間で学校を50何校まわって、コミュニティのアマチュアオーケストラの指導までやって、合計で70個くらいイベントをするわけです。僕はその一員として、1週間で8つの小学校に行ったんですよ。

イングランド南西部に位置するコーンウォール

■かなりの強行軍じゃないですか(笑)。

野村:かなりの強行軍(笑)。その時にボーンマス交響楽団の事務局の人が言うわけです。「こんにちは!ボーンマス交響楽団です。今日は日本の作曲家のマコトが来ています」。そういう時に、僕はさすがに「ボーンマス交響楽団のマコトです!」とは言えないわけですよ、いくらなんでも。だけど「日本センチュリー交響楽団の野村です」っていうのは言えるんです。そして「今日はここでいろんな音楽を作ってみましょう」って言って、子どもたちと2時間半くらい音楽をして、また別の学校に行って「日本センチュリー交響楽団の野村です!」…1週間に8回もそれを言っていると、“僕は日本センチュリー交響楽団の野村誠なんだな…”ってすごく感じてしまって「もっと日本での取り組みもイギリスに伝えていった方がいいかな」と思ったりしたわけです。自分は日本センチュリー交響楽団の一員として活動しているということを、もっと積極的に発信して行かなければならないなと思えた体験でした。

【オーケストラの可能性を広げる6つの活動。】

■ボーンマス交響楽団とは、今はどんな関わりなんですか?

野村:ヒュー・ナンキヴィルという作曲家が僕の20年以上前からの親友で、僕が最初に出会った時は主に子どもと音楽を作るという仕事をやっていたんですが、僕がセンチュリーと仕事を始めた頃にちょうど彼もボーンマスと仕事を始めたんです。その頃ボーンマスのコミュニティプログラムを担当するディレクターになったリサという人とも僕は以前に仕事をしたことがあって、せっかく僕の友人たちが向こうにいるのなら交流ができたほうがいいと思ってやりとりを始めているんです。それで実は9月23日に日本センチュリー交響楽団のことをイギリスの国際会議で発表する予定だったんです。台風の影響で関空から飛行機が飛べなくなったので、急遽ビデオ発表に切り替えてもらったんですが。

ボーンマス交響楽団の本拠地、ブルーライト・ハウス

■その内容をここでうかがえますか?

野村:はい。発表は日本センチュリー交響楽団のコミュニティプログラムについてです。それを20分で伝えられるような内容にまとめました。大きく風呂敷を広げると「オーケストラの中に革命を起こしている」ということですが、まず6つのことを行って来たと述べています。1番はワークショップ、2番は即興、3番が非西洋音楽、4番がサイト・スペシフィック(場所の提供)、5番が生きている作曲家との交流、6番がさらにそれ以外の広がり。1番目のワークショップのことはすごく考えた上で「オーケストラの楽団員はワークショップに向いています」と言いました。「なぜなら、オーケストラの楽団員は柔軟で、人のことをフォローするのが得意だから」。

■とても新鮮な視点だと思います。

野村:「オーケストラの楽団員は、楽譜に書かれていることをフォローするし、指揮者の言うことをフォローするし、コンサートマスターの言うことをフォローする。だから追随していく、その場で判断してついていくことが得意である」と。「創造的ワークショップというのはどう進むかわからない、参加者のクリエイティビティによって全然違う方に進んでいくけれども、そういう風についていくことができる人たちだから彼らはワークショップを行うための資質がある、だからワークショップをするのに向いているんだ」っていうのが1番目の主張なんです。

■オーケストラの重要な側面を「ワークショップ」への適正と考えた部分がすごく斬新に思えます。

野村:それと同じで即興演奏も得意なはずだという主張が2番目です。オーケストラは即興をやらないというけれども、例えば指揮者が変わったら同じ曲でも全然違う風に演奏できるし、指揮棒の振り方が変わるだけで演奏を変えられる柔軟性があるのだから即興演奏も“得意”であるはずだと述べています。で、3番目が19世紀の交響曲には18世紀に無かったようなチューバとか、いろんな楽器が入ってくる。20世紀の交響曲にはもっといろんなものが入ってくる。このようにオーケストラにはいろんな楽器を受け入れる自由さがあって、僕たちは21世紀の交響曲を考える上で「世界のしょうない音楽祭」でやったように箏とか三味線とかガムランとか、あらゆる楽器が入ってくる交響曲を追求するという活動を行っている。その結果、ヴィオラが箏の先生と一緒にコンサートをするとか、『春の海』をヴィオラで弾いてみようとかという風に、楽団員自身が非西洋音楽にも目を向けるきっかけになっているという主張です。

「せかいのしょうない音楽祭」での一コマ

世界のしょうない音楽ワークショップ
https://www.city.toyonaka.osaka.jp/jinken_gakushu/bunka/event/ev_music/a001010040010.html

■オーケストラがどんどん自由になっている感じですね。

野村:4番目が今年1月に行った騒音コンサートみたいに家を解体するところで演奏するとか、コンサートホール以外の場所で普段オーケストラが演奏しなかったような場所も会場になり得るということ。以上のような3つのことが実現できているので、そうしたコンサートホール以外のところで即興的にやるようなコンサートもできるようになってきたと語りました。5番目にオーケストラは普段はヨーロッパのすでに亡くなった作曲家の音楽に取り組むことがほとんどなのだけど、今日本で生きている作曲家にも興味を持っていて、そうした作曲家と積極的に交流することでもっと広がりが出る。それは今21世紀に存在する大阪のオーケストラとして価値があることだろうからどんどん率先してやっていこうという意味で、近藤浩平さんがホールのプレパフォーマンスの企画を担当したり、鈴木潤さんが「お茶の間オーケストラ」のアドバイザーに入ったりというかたちの交流を進めていると述べています。

作曲家・鈴木潤氏

■豊中のホールで僕も聴かせてもらいました。お客さまの感触も良好だったと思います。

野村:6番目としては就労支援とか哲学カフェとか音楽以外に関わる分野のことも取り組んでいるし、さらにはマンチェスター・カメラータなどのプログラムとか海外との交流もいろいろと率先して行っていきたいというような内容を加えて、ざっとこの6つを今やっていますと述べています。“コミュニティプログラム”という言い方をすると地域との関わりや教育的な活動というように聞こえるかも知れないですが、僕はオーケストラの可能性をどう広げるかということをしていると思っているんです。だからオーケストラプレイヤーが得意なことは何なのか、オーケストラが可能なことは何なのか、っていうことを考えた時に、オーケストラの資質はワークショップや即興の分野で結構伸びしろがあると。今はまだ慣れないことかも知れないけど、資質としては向いている分野なんだと僕は思っています。

楽団員が高齢者と音楽創りに取り組む「お茶の間オーケストラ」

■素晴らしい展望だと思います。未来志向のオーケストラというか、オーケストラ自体の役割が増えてきますね。

野村:これは18世紀や19世紀の西洋音楽を演奏することを除外しているわけではなくて、オーケストラのできる仕事の幅を拡げているだけなので、ここを核にしながら「もっとこういう方向にも広がれるんじゃないですか?」ということと「これぐらい広がれるので、オーケストラにもっとどんな仕事ができるのかを皆さん一緒に考えましょう」ということを言いたいんです。

■コミュニティプログラムの本場はイギリスという風に聞いていますが、この6つの成果は日本の活動の中で、ある種の先駆けとなるものじゃないでしょうか?センチュリーや他のオーケストラにとっても指針となるような気がします。

野村:日本の状況を全く知らないイギリス人の人たちにどう説明するか、そしてイギリスでもたくさんのオーケストラのコミュニティプログラムが行われているけれども、われわれがやろうとしていることがどういうことなのかを、彼らとの違いも含めてちゃんと伝えたいと思いました。どうやって説明したらわかってもらえるかな…と考えた時に、オーケストラとは“ワークショップと即興が得意な可能性のある人たちの集団”だと気付いたんです。同時に交響曲というのは21世紀にはこういう風に広がっていくのではないかという可能性も。先駆けているかも知れないけれど、あまり発信はできていない、そう思ったので最初にイギリスで発表しようと考えました。まずは発信するところから始めないと。

■ビデオはどこかにアップされるんでしょうか?

野村:アップしたいですね、終わったらぜひアップしたいと思います。

※野村誠氏、英国でのプレゼンテーション動画
https://www.youtube.com/watch?v=eYYgkidllPo&feature=youtu.be
※「お茶の間オーケストラ」の活動をまとめたブックレットをご覧いただけます。
http://www.century-orchestra.jp/topics/otyanoma/

いずみ定期演奏会No.40
ハイドンマラソン

2019年1月25日(金)

19:00開演(18:00開場)

INDEX
Back Number

ページの先頭へ戻る