CENTURY WEB MAGAZINE

センチュリーウェブマガジン vol.7

注目の公演

センチュリーならではのブルックナーを。
飯森範親と楽団員が語る
交響曲第4番『ロマンティック』

 2018年1月、第222回定期演奏会で、久々のブルックナーに取り組むセンチュリー。飯森範親を首席指揮者に迎えての、初のブルックナーでもあります。演目は交響曲第4番『ロマンティック』。これを皮切りに2018-19シーズンの6月には交響曲第7番を演奏するなど、ここからセンチュリーはブルックナーも積極的に採り上げていきます。さて今回は、飯森範親とブルックナーを愛してやまないセンチュリーの楽団員たちによる「ブルックナー対談」。公演に向けた意気込みがたっぷりと感じられる内容になりました。

参加者
飯森範親:首席指揮者
向井和久:副首席ホルン奏者
相蘇 哲:第1ヴァイオリン奏者

相蘇哲(第1ヴァイオリン)・飯森範親・向井和久(ホルン)相蘇哲(第1ヴァイオリン)・飯森範親・向井和久(ホルン)

■ 第222回で交響曲第4番『ロマンティック』、第226回で交響曲第7番とブルックナーの演奏が続いていきます。そこでまず最初にブルックナーの音楽全体の魅力というか、特徴についてお話いただきたいと思います。

向井:ブルックナーはオルガニストだったこともあって、交響曲全体がオルガンみたいな響きなんですが、後期になると非常に壮大になりますよね。オーケストラの編成も大きくなる。でも根本に流れているものは一緒ですよね。敬虔なカトリック信者ですから、彼の音楽は神に近いものを表現したんじゃないでしょうか。

■ 同時代のブラームスや、少し先のマーラーなんかともちょっと違う感覚ですね。音楽が自分自身とは別のところにあるというか。

飯森:ブルックナーの作品にあるのは自分自身のことじゃなくて、神ですね。

向井:神との対話かな。

飯森:神との対話もあるだろうし、神だけではなくて先人たちとの対話っていうのがあるんじゃないかな。たとえばバッハとか、そういった人たちとの。ブルックナーとそれ以前の作曲家の人たちとの、自分の曲を通しての意思疎通っていうのがあったと思うんです。影響があったのはワーグナーだし、ワーグナーに対する敬愛は1860年くらいから、ものすごく強くなっていったわけで、だから自分というよりは、いつも対象として神があったり、尊敬する芸術家や先人たちがいたり、という世界の中で曲を書いたのでどこか確信が持てずにいるんですよ。だから人から言われると改訂(※1)しちゃうんです。

アントン・ブルックナー(1824~1896)アントン・ブルックナー(1824~1896)

■ ものすごく精神的に高い世界を目指したがために、現実の自分の作品には自信が持てないというような感じでしょうか?

飯森:もちろん作品によります。例えば3番なんかだと一番最初の楽譜は“ワーグナー大好き”ってスタイルで書かれていますが2稿になるとぜんぜん変わってしまいます。その辺に彼自身が人から言われてしまうと、じゃ変えてしまおうっていう自信のなさが見えます。その点、第6番は1稿しかないです。あれに関しては彼自身、自信があったんでしょうね。


■ 『ロマンティック』も3回書き直されていますよね。

飯森:今回僕はギュンター・ヴァント(※2)が演奏したのと同じ1878年稿という楽譜で演奏しますが、ただ中味は少し変えています。ここは変えるべきじゃないかな、と考えてあえて変えているところはあります。


■ ではここからは第4番『ロマンティック』について。聴きどころをうかがいたいと思います。

向井:高関さん、小泉さんの時にも演奏しましたが、指揮者が変わればまた違った4番になるかなと楽団員は期待していますね。特に今度の4番は今のセンチュリーの編成を最大限に活かせるんじゃないかな、と思います。

飯森:今、向井さんがおっしゃったことはすごく的を射ていると思うんです。第2楽章なんかはすごく対位法的なんですよ。大編成のオーケストラだと1stヴァイオリンの後ろ、2ndヴァイオリンの後ろまで、そんな対位法のエッセンスを汲み取ってもらって一緒に動けるかっていうと、ヨーロッパのオーケストラでも難しいと思うんです。だけどそれを10型くらいのコンパクトな編成でやると非常に行き届くので、ほんとにバッハの平均律のフーガみたいな面白さというものが出て来ます。それがセンチュリーのみなさんとブルックナーをやる醍醐味かなと思います。

向井:私はホルン吹きなので、マーラー、ブルックナーとなるとちょっと構えちゃいますね。うん、どうしても。もちろんマイナスの意味じゃなくて、やっぱりベートーヴェンやブラームスとは違った響き、響かせ方っていうのを心がけて演奏したいですし、してますね。

飯森:この作品は、金管楽器の和音の使い方が非常に効果的なんです。それから第2楽章などに出てくる木管楽器のソロのメロディやモチーフといったものがとても耳に残りやすい。で、またピアニッシモからフォルテッシモまでのダイナミックレンジの差。それが人間の生理とものすごく一致している。だからピアニッシモで始まってこのくらいのところで盛り上がってもらいたいなってところで時間的にうまくピークを作って感動させてくれる。これはブルックナーとしてもものすごく緻密に考えて作ったんじゃないかなって思うんです。

相蘇:私は4番に限らずブルックナーは大好きですから。いつも演奏していて時間を忘れられるというか。

飯森:時間の感覚が出ますよね。時間に対する考え方がブルックナーってすごいんです。だから時間そのものを忘れさせてくれたり、感動させてくれたり、それからまた異様な緊迫感の中に連れて行ってくれるっていうのもある。その配分がすごいんです。


■ 弾いていて時間を忘れるってどんな部分なんですか。弦の聴きどころとして押さえておきたいです。

相蘇:『ロマンティック』ですと、僕はけっこう緩徐楽章が好きです。ブルックナーを好きな人は、緩徐楽章に感動する人が非常に多いですね。僕もそれを4番で経験しました。2楽章のチェロが弾き始める散歩みたいなところで、4声体の純粋な響きそのものになるんですね。全音符しか書かれてないんですけど、そこを弾いていると、いいなあって思うんですね。そういうところに、僕はシューベルトに近いものを感じるんです。たとえばシューベルトの最後の交響曲『グレイト』。1楽章と4楽章にゲネラル・パウゼ(全体の休止)みたいなフェルマータを書いてますよね。あれは絶対、ブルックナー・パウゼ(※3)だって指摘なさる人もいます。余白であり、空白であり…。

向井:打楽器もあまり使わないですね。あれも特徴ですよね。

飯森:そう。僕が思うのは、打楽器もそうなんだけど原点はハイドンですね。ハイドンから来てますね。

向井:なるほど。

飯森:ハイドンが、シューベルトに影響を与えて、それがさらにブルックナーに影響を与えてと、そういう形だと思います。だってああいったパウゼを入れだしたのはハイドンだから。


■ 脈々と続いているんですね。

向井:何も音がないっていうのは、音楽の中の究極ですからね。

交響曲第4番「ロマンティック」(ブルックナー作曲)第4楽章 412小節のゲネラル・パウゼ交響曲第4番「ロマンティック」(ブルックナー作曲)第4楽章 412小節のゲネラル・パウゼ

飯森:僕はギュンター・ヴァントのラストコンサートを聴いてるんです。ガスタイクでミュンヘン・フィルを(※4)。それがほんとに彼の生涯で最後の演奏だったらしいですね。その時の演奏がブルックナーの4番。だけど、4楽章の途中でよろけちゃって、倒れそうになったんですよ。それをコンサートマスターとチェロの人が立って支えて、だけど一切手を止めないで振ってました。今でもはっきり覚えています。1階席の比較的真ん中のやや右サイドあたりで聴いてたんだけど、終わった時に、誰ひとり拍手しないんですよ。

相蘇:あんまりすごいんで?拍手できないんだな、もう。

飯森:誰っひとり。それでずーっとしーんとしてて、オーケストラも身動きできない感じで。でね、けっこう長く感じたんだけど、40秒、1分あったとは思えないけど、そしたら、うわーっと拍手が鳴って、すごかったですよあれは。みんな余韻というか緊張感というか、もしくは緊張感から解き放たれたというか。最後のEs-Durのハーモニーで。

相蘇:今、お話聞かせていただいて個人的な感想なんですが、その時、おそらくミュンヘンフィルの人たちもきっとヴァント先生これが最後だな、と多分思って…。

飯森:多分。それは僕も思う。いまだに鮮明に覚えてますね。いや、正直に言うと彼のあの演奏を聴いちゃったがために僕も同じ版になっちゃったんです。彼が演奏した版が1878年稿なんですけど、正直あれを聴いたら僕も、他の版にはいけなくなっちゃったんですよ。あまりのインパクトで。それで、それ以来ずっとこの版でやらせてもらってるんです。いずれはノヴァーク版なんかもやったほうがいいんでしょうけど、今はまず、この演奏から聴いていただきたいなと思っています。

注(※1)ブルックナーの版問題:ブルックナーは自作の交響曲に集中的に改訂を行っている。また演奏・出版に際して第3者の手が加わった作品もあり、このため作品によってはブルックナーの生前より、いくつかの「稿」「版」が存在することになった。さらに1930年代からブルックナーの全集編纂に携わったロベルト・ハース、また第2次世界大戦後、その後を次いだレオポルド・ノヴァークの校訂方法が異なるため、「稿」はさらに複数の「版」に分かれることとなる。演奏においてどの「版」を参照するかは演奏者の判断とされ、また演奏者によっては複数の稿・版による折衷的な解釈が行われるのもブルックナーならではの大きな特徴と言える。
注(※2)ギュンター・ヴァント(1912 - 2002):ドイツの指揮者。ドイツ-オーストリア音楽を得意としたが、特に老境から晩年に至ってのブルックナー演奏に画期的な業績を残した。
注(※3)ブルックナー・パウゼ(休止):ブルックナーの交響曲を特徴付ける要素のひとつ。音楽の途中で楽想が変わる時、オーケストラ全体を休止(ゲネラル・パウゼ)させる方法。
注(※4)ガスタイク:ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団が所有する文化施設。フィルハーモニックホールは2387席を有する。ここでギュンター・ヴァントの最後の演奏が行われたのは2001年9月15日のこと。

第222回 定期演奏会

2018年 1月19日(金) 19:00開演 (18:00開場)
    1月20日(土) 14:00開演 (13:00開場)

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My Favorite Things 〜私のお気に入り〜

中屋 響中屋 響(第二ヴァイオリン)「職人さんとの楽しい時間」

 ちょうど大学を卒業した頃だったと思いますが、「もっと楽器の事を知りたい!」というか「知らなさ過ぎる!」と気づく事があり、色々調べているうちに、弦楽器フェア(見本市)に行くようになりました。

弦楽器フェア(見本市)弦楽器フェア(見本市)

 会場では新作楽器から高価な楽器までたくさん置いてあり、そのほぼ全てを実際に手に取って弾く事ができます。
 初めて会場に入った時は、あまりの人の多さともの凄い熱気に圧倒されましたが、このイベントに行くようになって日本人の新作にも素晴らしい楽器があるという事を知りました。新作といっても本当に様々で、ピカピカの楽器からアンティークフィニッシュ(故意に古く見せる仕上げ技法)の楽器もあって、音もそれぞれに個性があります。何年も通っていると、自分が良いと思った製作者の楽器でも去年の方がいいなと思ったり、興味が無くなったりする事もあります。同じ製作者でもその時々で全然変わってしまうというのも楽器製作の面白いところです。

レーゲンスブルクの弦楽器工房レーゲンスブルクの弦楽器工房

 弦楽器フェアや展示会に参加するうちに、僕は職人という職種の人がわりと好きだなという事に気づきました。それまで職人さんってどちらかと言うと寡黙な職人気質と思っていましたが、楽器に関わる話をし出すととても饒舌になります。お昼頃に伺って、毛替えを待っている間に話に火がつくと、ひたすら何時間も話してしまい、気がついて帰るのは夕方ということもしばしばです。
 話しているとそれだけその人となりも分かりますし、僕にとっては只々楽器と人生の勉強になるとても楽しい時間です。

 この前聞いた印象深い話です。職人さんは同じ製作者の楽器を何年もずっと見ているので、例えば「結婚して幸せなはずなのにこの時期の楽器は何故か音が良くない。でもその後子供が産まれたあとのはすごく音が良いんです。」みたいな、人間くさい話をして下さいます。こういう話はなかなか聞けないし、そういう楽器への見方もあるのかと思わされたりで興味が尽きません。
 職人さんは修業される国によっても考え方が違います。お世話になる方以外でも機会に任せ色んな方とお会いします。
 2年ほど前だったと思いますがドイツで活動されている職人さんで珍しくブログを書かれている方がいて、ブログ経由で連絡を取り、一時帰国された際にお会いした事があります。その時見せていただいた彼自身のオールドフィニッシュの楽器は、それまで見た中で一番自然な古さを表現していると感心しました。また、日本ではあまり知られていないドイツオールド(1800年以前にドイツで製作された楽器)の作家の話などはとても興味深く印象的でした。

レーゲンスブルクの弦楽器工房レーゲンスブルクの弦楽器工房

 日本では楽器製作と言えばイタリアのクレモナが有名ですが、ドイツの楽器製作にも歴史があります。現代ドイツの楽器製作には国家資格があり(Geigenbaumeister)、日本人でもその資格を取得して活動されている職人の方がたくさん居られます。ドイツオールドではシュタイナーとかクロッツファミリーが知られていますが、その時は、その職人さんが活動しているレーゲンスブルクという都市の、18世紀に活躍していたG.D.Buchstetter(ブッフシュテッター)という製作者について教えて頂きました。
 この人は当時ドイツで一般的に製作されていたヴァイオリンとは違った趣向のものを作っており、イタリア以外では最も初期に作られたストラディヴァリの複製です。スクロール(先端の渦巻き)は独特ですが、アーチ(ボディのふくらみ)はこの時代にしては平らで胴体はストラディヴァリとよく似ています。この作者の楽器を当時の有名なヴァイオリニストであるルイ・シュポア(1784~1859)が使っていたそうです。
 こういったその地で活動されている方だからこその知識も聞く事ができ、僕にとってはとても有意義な時間でした。

ルイ・シュポア(1784~1859、ドイツ)ルイ・シュポア(1784~1859、ドイツ)

 楽器だけでなく、それを製作する方々と話をするのは本当に楽しい事です。まだまだ知らない事の方が多いので、これからも機会を見つけては楽器の世界に触れる時間を作っていきたいです。

注目のトピックス

プレイバック2017 -今年のコンサートから

 2017年もいよいよあとひと月を残すばかり。今年もセンチュリーの演奏をお聴きいただいたお客さまに、厚く御礼申し上げます。さて、シーズンはまだ半ばですが、今回は4月からこれまでのセンチュリーのコンサートを少し振り返ってみたいと思います。会場にいらしたお客さまはステージの模様を思い出しながら、ぜひ一緒にお楽しみください。


■ シンフォニー定期演奏会 〔ザ・シンフォニーホール〕

 今シーズンのセンチュリーは第216回定期演奏会(4月21日、22日)で幕を開けました。首席指揮者飯森範親、ピアノに江崎昌子さんを迎えたステージはパリという都市に縁の深い、エロール、ショパン、モーツァルトの3人を取り上げた内容。モーツァルト以外の手に成る作品も含む『レ・プティ・リアン』の全曲演奏など、さながら音の宝石箱といったイメージの演奏会でした。江崎昌子さんは、ショパンのピアノ協奏曲第1番を披露。グリーンのドレスがステージに映えて、とても印象的でした(写真左下)。
 センチュリーのボルテージが一気に上昇したのが第217回定期演奏会(6月16日、17日)。指揮、ヴァイオリンには現代を代表する巨匠のひとりであるドミトリー・シトコヴェツキーさんを迎えました。ふたりの現代作曲家、ジョン・アダムスとジョン・コリリアーノを採り上げた前半も見事でしたが、ドイツ音楽の香気を湛えたかのような後半のシューマンがまた圧巻。楽団員の多くからも感動の声が聞かれた演奏会でした。ただしジョン・アダムスの『議長は踊る』での変拍子の洪水は楽団員にとってもかなりスリリングな体験だったらしく、「とにかくカウント命!の回でした」という証言も。『レッド・ヴァイオリン』でのシトコヴェツキーさんのヴァイオリン独奏も深く心に残りました(写真右下)。

 シトコヴェツキーさんを“国際的な巨匠”とするならば、バルトークやコダーイといった母国ハンガリーの音楽に深い愛情を注ぐ“伝統の巨匠”とでも呼べそうなのが、第218回定期演奏会(7月7日、8日)に登場したヤーノシュ・コヴァーチュさん。『“飛べよ孔雀”による変奏曲』『ガランタ舞曲』での独特の色彩感に溢れた演奏には、息を呑む瞬間がたくさんありました。センチュリーとは初共演ながらその音楽の魅力はお客さまにも十分に伝わったことと思います。そしてこの回にソリストとして登場したのがイェンス=ペーター・マインツさん(写真下)。クラウディオ・アバドが編成したルツェルン祝祭管弦楽団の首席チェロ奏者でもあります。朗々と、時に深沈と鳴るシューマンのチェロ協奏曲の響きに魅了されたお客さまも多かったのではないでしょうか。

 飯森範親とセンチュリーがその独創的な音楽の魅力を示したのが第219回定期演奏会(9月15日、16日)。ジョージア出身の現代作曲家ギア・カンチェリの『ステュクス』を採り上げました。前半に登場したピアニスト、ジョージ・ヴァチナーゼさんによる鮮やかなラフマニノフのピアノ協奏曲第3番の余韻も醒めやらぬ中、ヴィオラ独奏と合唱を伴う「生」と「死」のはざまの幽玄な音のドラマが繰り広げられました。独奏はセンチュリー首席ヴィオラ奏者の丸山奏。後に彼女は「ステュクスを演奏している時、自分はホールの舞台にいるのではなく、地上を遠く離れ、亡くなった大切な人の魂と音で会話しているような気持ちになりました」とステージ上の自分を振り返っています。音楽そのものと一体となったかのようなその存在感に多くの人から感動の声が寄せられました(写真左下)。
 11年ぶりの共演となる名匠・秋山和慶さん、ロシア出身の名ヴァイオリニスト、アリーナ・イブラギモヴァさんを迎え、話題性も十分だったのが第220回定期演奏会(10月20日、21日)。第1曲目のブラームスの『大学祝典序曲』から、秋山マエストロはすでに輝かしい響きをセンチュリーから引き出しました。そしてイブラギモヴァさんがブラームスのヴァイオリン協奏曲で聴かせた独奏の、すさまじいばかりの集中力。その熱気は会場全体を包み込み、多くのお客さまにとって忘れ難い演奏となったのではないでしょうか(写真右下)。シベリウスの交響曲第1番の暖かく透明な響きもまた、強く心に残る演奏でした。


■ いずみ定期演奏会 〔いずみホール〕

 3年目を迎えたいずみ定期演奏会No.35「ハイドン・マラソン」(5月26日)はふたつの「ドーニ交響曲」と「イギリス交響曲」からスタートしました。毎回、ハイドンの同時代の作曲家の作品も採り上げてお楽しみいただいているシリーズですが、今回演奏したのはモーツァルトのホルン協奏曲第2番。ソリストは首席ホルン奏者の水無瀬一成が務めました。「本番はあっという間に終わった感じ。5分くらいの感覚みたいな…」。そうステージを振り返る水無瀬の言葉に、深い集中力がうかがえます。透き通ったホルンの響きが流れるようにオーケストラと語り合う時間は、多くのお客さまの記憶に留められたことと思います(写真左下)。
 そして続くいずみ定期演奏会No.36(8月11日)は、ハイドンのとぼけたユーモアが全開する交響曲第60番『うっかり者』で幕を開けた盛りだくさんな回でした。この曲の第6楽章では、なんとヴァイオリンが調弦をやり直すという趣向も(!)。ディッタースドルフのコントラバス協奏曲でソリストを務めたのは首席コントラバス奏者の村田和幸。弦楽器で一番大きな楽器であるコントラバスを、ステージ中央で悠々と弾く姿がとても印象的でした(写真右下)。


■ センチュリー豊中名曲シリーズ 〔豊中市立文化芸術センター〕

 センチュリーの新たなホームとも言える豊中市立文化芸術センターで、今年3月にスタートした演奏会。そのVol.2(5月7日)は本名徹次マエストロによるベートーヴェンの交響曲第1番で幕を開けました。とは言えこの日、ひときわ注目を集めたのは華やかなドレスに身を包んだピアニストの児玉麻里さん、児玉桃さん姉妹。プーランクの2台のピアノのための協奏曲では姉妹ならではの絶妙な呼吸と、そこに絡むオーケストラのスリリングな魅力が満載でした。おふたりはサン=サーンスの「動物の謝肉祭」にも登場し、色鮮やかな音色を披露してくれました(写真左下)。
 Vol.3(9月30日)には、センチュリーの主催公演には初登場となる延原武春マエストロを迎え、ベートーヴェンの交響曲第6番「田園」ほかを。古楽演奏の大家である延原マエストロらしい、細やかな抑揚と新鮮なテンポ感に溢れた『田園』でした。モーツァルトのクラリネット協奏曲では首席クラリネット奏者の持丸秀一郎がソリストを務めました。直前のインタビューでは「音楽から余計なものが剥ぎ取られて必要なものだけ残っている。そんな演奏ができればいい」と語っていた持丸ですが、まさにその言葉に近づいたような、純度の高い演奏が聴けたような気がします(写真右下)


 今年の演奏を振り返ってみて、いかがでしたか?長く思い出に残るような、そんな演奏との出会いはありましたか?すでに来シーズンのプログラムも発表されていますが、センチュリーの2017-18シーズンはまだまだ続きます。これから先の公演にも、どうぞご期待ください。

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